相手に誤解されないための「話の伝え方」

「そんなつもりで言ったんじゃないのに!」
「どう聞いたら、そう解釈するんだ?」

仕事をしている中で、こちらが意図しない反応や回答を、相手が示してくることはありませんか。

多くの仕事は、自分ひとりだけで完結できることは稀で、他の人との連携や協働を伴います。

相手とのコミュニケーションが正しく取れていないと、認識のズレが生まれ、それが手戻り、二度手間、やり直しといった、著しい生産性の低下を招くことになります。

私は、人材派遣会社で働いていた頃、東京の本部から全国の拠点にいる約60名のマネージャーの方々へ、通達や連絡を発信する役割にいたことがあります。

数が多いので、情報発信は主に文書やメールで行っていました。この内容が曖昧であったり、不明確であったり、矛盾していたりすると、「書いてある意味がわからない」と、次から次へと質問の電話がかかってくる事態に陥ります。

当然、電話には一人ずつしか対応できません。60人全員からかかってくることはないとしても、数十名に電話で説明していたら、それだけで何時間もの時間を要してしまいます。

「折り返し電話ください」のメモが山積みになり、それが片付くまでは他の仕事に移れません。当然、仕事は大きく滞り、退社時間も遅れます。

電話対応に何時間もかけるくらいなら、より正確に伝わるよう、わかりやすくて誤解しにくい文書を丁寧に作り込むことに時間をかける方が、よほど質が高く、効率的な仕事をしていると言えます。

「正しく話を伝えられないと、多大な時間を失うことになる」

これが、私が当時、数々の失敗を重ねる中から得た教訓でした。

相手との誤解を防ぎ、自分の伝えたいことを正確に伝えるためには、次の3点に留意することが有効です。

上記の例は文書やメールですが、口頭でのコミュニケーションでも同じことが言えます。

1.意図を明確に伝える

人に何かを伝える際に、最も重要なことは自分の意図を明確に伝えることです。

  • 依頼なのか
  • 相談なのか
  • 情報共有なのか

何のための話なのかをしっかりと伝えることで、相手にどうして欲しいのかを理解してもらうことができます。

そんなことは、当たり前ではないかと思うかもしれません。しかし、意図が不明確な伝え方をするあまり、相手に真意が伝わらないとことは少なくありません。

例えば、部下が上司に顧客とのトラブルを報告したとします。

「取引A社への商品の納期が誤って手配されてしまい、希望日に届かないと先方がご立腹です」

これだけでは、話を聞いた上司は戸惑ってしまいます。

「それで?私にどうしろと?」

  • 顧客との対応にあたって欲しいのか(依頼)
  • 対応するための知恵を貸して欲しいのか(相談)
  • とりあえず、そういう状況にあることを知っておいて欲しいのか(情報共有)

それを先に明確に伝えることで、上司は心の準備を整えて話を聞くことができます。

たとえ、何かの意見を述べるとしても、相手の意図を踏まえた上での回答となるので、「そんなつもりで言ったんじゃないのに」といった、話し手の反発を回避することもできます。

相手にどうして欲しいのか。自分の意図を明確に示すことは、シンプルですがとても効果的なアプローチです。

2.前後関係を明確にする

人に何かしらの依頼を行うときには、話の背景、目指すべきゴール、前後の行程などに触れておくことが大切です。

例えば、上司が部下に「自分の担当している案件の状況を、資料にまとめて提出して欲しい」という指示を出したとします。

これだけでは、どういうアウトプットで、どれくらいの詳細さでまとめたら良いのかわかりません。また、作成した資料を、誰が何のために使うのかもわかりません。

上司がチームの状況を把握するためにデータを集めているのであれば、ひとまず内容が網羅されていれば、形式は問わないかもしれません。

しかし、会議資料として配付するのであれば、印刷した時に読みやすいように、レイアウトを組み、印刷設定を施す必要があります。

上層部へ報告する資料として使うのであれば、多忙な方でもすぐ理解できるようにグラフなどの視覚表現を盛り込む必要があるかもしれません。また、読み手が年配者であれば、文字のサイズを大きくする配慮も求められます。

作成した資料が何に使われるのかを抑えておくことも大切です。目標に対する達成率を把握するのであれば、当年実績だけではなく、目標値や前年実績などのデータも添えて、進捗率を計算して提出する必要があるでしょう。

一方で、現在進行している案件の構成比率を見たいのであれば、商品やサービス、あるいは顧客の業種ごとにグループ化したり、並び替えをしたりしてリストを作成することが効果的です。

背景や目的は何なのか、それを何に使うのか。それらを添えて指示や依頼を出すことによって、自分の欲しいものが得られるよう、アウトプットのイメージを相手と共有することができます。

3.具体的に言う

自分の要望をより正確に相手に伝えようとするならば、具体的に伝えることが重要です。

具体的というのは、話が示している範囲をより限定的にするということです。とりわけ、ビジネスの現場で言えば、できる限り「数字で言う」ことが求められます。

最たるNG例は、「なるべく早く」です。

「なるべく」の意味する範囲は、人によって大きく異なります。また、同じ人であったとしても、その人が置かれている状況によって、解釈が変わることもあります。

数時間なのか、数日なのか、一週間程度なのか。話し手と受け手のイメージが大きく食い違う可能性が高いのが、こうした曖昧な言葉です。

認識の相違を生まないようにするためには、日付や時刻などを明確に示す方が効果的だと言えるでしょう。

また、そこまで抽象的ではないにしても、「今週金曜日までに提出してください」という依頼の仕方も、食い違いを生み出しやすい表現だと言えます。

金曜日は含めるのか、含めないのか。この場合、どちらにも解釈することができます。(含めない場合、実施的には木曜日の晩を期限として捉えることもできます)

金曜日を含めるにしても、17時や18時といった終業時刻をイメージしているのか、残業して対応して良いのか(金曜日の23:59までOKなのか)で、意味する範囲が大きく変わってきます。

「11/10(金) 17:00までにご提出ください」

ここまで具体的に言えば、異なる解釈をする余地はなくなります。

また、別の例として、「昨日の会議の内容を、簡単に議事録にまとめておいて」という指示を受けたとします。

「簡単に」とは、何を指すのでしょうか。

作り手にとって「簡単」を意味するのであれば、結論だけ箇条書くなど、最低限の記載で済ませることができます。一方、読み手にとって「簡単」にするためには、図解を盛り込むなど、高度な概念化作業を伴うことになります。解釈によって、まったく逆の意味してしまうのです。

「A4用紙1枚程度で」「結論、役割分担、スケジュールを箇条書きで」など、アウトプットの質や量を具体的に表現することで、話し手のイメージを相手と共有することができます。

コミュニケーションのロスは、手戻りや二度手間など生産性の低下を招くとともに、信頼の低下など人間関係に悪影響を及ぼすこともあります。

自分の考えていることを正確に相手に伝えられることは、効率的で質の高い仕事、お互いが気持ちよくできる仕事をする上で、とても重要な能力であると言えるでしょう。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。