自己理解と自覚2 過去と未来から見た現在

ブログをご覧のみなさま、こんばんは。小松茂樹です。
前回に続き、STARモデルの「自己理解と自覚」のフェーズについてご説明いたします。

自己理解と自覚のフェーズの流れ

このフェーズは、以下の4つのステップから構成されています。

1.過去→現在のアプローチによる自己分析
2.未来→現在のアプローチによる自己分析
3.セルフイメージ(自己概念)の明確化
4.ミッション・ビジョン・目標・戦略の策定

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記憶を呼び起こす

自己理解は、過去から現在に至るまでの人生の振り返りからはじまります。4つのステップの中では最も根幹になる部分です。

とりわけ、キャリア開発の考え方では「自分の目指すべき道は、自分の過去が知っている」というスタンスを取り、これまでの自分の人生を振り返ることから自身の将来の方向性を見つけていきます。ここで必要となってくるのは「自分の記憶を呼び起こす」ということです。

また改めて詳しく書きたいと思いますが、一度インプットされた記憶は消滅はすることはありません。潜在意識は無限の記憶の貯蔵庫であり、記憶そのものはいつまでも残っています。

しかし、私たちは毎日新しい日々を迎えていて、次から次へと新しい記憶が蓄積されていくので、特定の意図・目的・感情と結びつかない記憶は、新しい記憶の下敷きになって、どんどん埋もれていきます。

とは言え、記憶はなくなったわけではなく、埋もれているだけです。この埋もれている状態を「忘れる」と言います。

すべての記憶は潜在意識の中で絶えず自動的に整理され、体系化されています。そのため、すでに忘れてしまったと思われる記憶であっても、関連する何かの手がかりが一つでもあれば、それに紐づけられた記憶を芋づる式に掘り起こすことができるのです。

<その手がかりで、最もパワフルなのが「感情」です。強い感情を伴った出来事は、後からでもアクセスしやすい状態で記憶されます。

・苦しかったこと
・悲しかったこと
・頭にきたこと
・楽しかったこと
・嬉しかったこと
・ありがたかったこと

こうした出来事が記憶に強く残っているのは、記憶のインプット時に感情の動きが伴っているからです。無限の記憶の貯蔵庫の中では、感情は記憶のインデックスとして作用してくれます。

キャリアカウンセリングが自己分析として効果的なのは、感情を手がかりとして過去の自分との対話を促すアプローチになっているからだと私は考えます。

過去→現在のアプローチ

前置きが長くなりましたが、自己理解は過去の記憶を呼び起こし、自分に関する情報を整理し、体系化して、認識することからはじめます。過去から現在に至るまでの自分の軌跡をまとめるということです。

具体的な手順は本編で述べていきますが、下記のようなツールを使って自分に関する調査を行っていきます。これまでもこのブログで説明させていただいたものばかりなので、詳しく知りたい方はリンクをご参照ください。(手抜きですいません)

キャリアインベントリー

これまでの仕事の経歴を洗い出すツールです。
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キャリアインベントリーをまとめる 1(2014/8/12)
キャリアインベントリーをまとめる 2(2014/8/13)
キャリアインベントリーをまとめる 3(2014/8/14)
キャリアインベントリーをまとめる 4(2014/8/15)

ライフラインチャート

人生の流れの全体像を描き、把握するツールです。

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ライフラインチャートを描く(前編)(2014/7/31)
ライフラインチャートを描く(後編)(2014/8/1)

自分年表

その名の通り、自分に関する出来事を年表形式で整理したものです。作成に大変時間がかかりますが、完成するととてもパワフルな自己理解ツールになります。
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自分年表を作成する(2014/8/19)
自分年表作成の手がかり1 日記(2014/8/20)
自分年表作成の手がかり2 スケジュール帳・写真・家計簿(2014/8/21)
自分年表作成に役立つもの3 文集、メール、ヒアリング(2014/8/22)
自分年表から重要な部分を見分ける(2014/8/25)
自分年表から役割を書き出す(2014/9/3)

その他、質問に答える形式で過去を振り返っていく方法もあります。

オススメなのは、リチャード・H・モリタ著『マイ・ゴール これだっ!という「目標」を見つける本』の巻末にある質問集で、出生から老後までの自分に関する問いかけが数多く掲載されています。

私自身の体験としても、この質問集はかなり「使える」ものでした。

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このように、いろいろな手法を用いて、自分のこれまでの人生を振り返っていくのが「過去→現在のアプローチ」のステップです。

未来→現在のアプローチ

自己分析は過去の分析を主として行いますが、これがうまくいかないケースがあります。

過去分析をするには、いろいろと材料が必要になります。生まれてから今までの人生のすべてを、単に「思い出そう」と思うだけで思い出せない場合もあります。

私自身、自分の歴史を調査するのに膨大な時間と手間がかかりました。昔の手帳、日記、写真、小遣い帳、年賀状、メールのやりとりなどをかき集めて、物証手がかりにようやく自分年表がある程度書ける程度になった、という感じです。

それでも、自分としてはまだまだ不十分です。特に高校以前は、記憶も材料も乏しく、大学生以降と比べると圧倒的に情報量が不足しています。このあたりがもっと埋まれば、自己理解がさらに深まって、自分自身の軸がよりハッキリするのになぁと思うほどです。

また中には、人格に強い影響を与える結果となったネガティブな記憶が、封印されてしまっているということもあります。

あまりにも悲惨な体験、辛い体験がある方の場合、その記憶にあることで日々の生活に障害をきたす恐れがある場合、本能的にその記憶を奥底に封じ込めようとする作用が働くのです。これを精神分析心理学では「防衛機制」と呼びます。

防衛機制が働いている場合、その記憶を無理に呼び起こそうとするのは、精神衛生上危険な結果を招く場合があります。この場合は、むしろ過去→現在のアプローチをやめるべきとも言えます。

したがって、過去から現在を見る以外の方法も必要だと考えました。それが「未来から現在を見る」というアプローチです。なりたい姿を思い浮かべ、現在の自分と比較することで、自分がいま求めているものを探っていきます。

Be,Do,Haveリスト

手っ取り早いのが、以前このブログでご紹介させていただいた Be,Do,Haveリストを作成することです。

Do,Be,Haveリスト(2014/9/11)

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その名の通り、自分の

・なりたい姿
・やりたいこと
・欲しいもの

を思いつくままに紙に書きだすというものです。いたってシンプルな方法ですが、やってみると意外と効果的です。

一度書いて終わりにするのでなく、数日置いてから書いたものを読み返してみると、

・これはやっぱり違うかな
・これを書き忘れていたな

と、どんどん洗練されていきます。

私の場合、このリストを毎日読み返し違和感がないかどうかを確認するようにしています。なお、前回の掲載時と順番を変えたのは、「なりたい姿」→「(そのために)やりたいこと」→「(そのために)欲しいもの」という順の方が理にかなっていると思ったからです。

願望を浮き彫りにする質問ゲーム

これ以上に自分の有効なのが、願望を浮き彫りにする質問ゲームです。

行動心理コンサルタントの鶴田豊和さんがご自身のセミナーの中でやっておられた「願望あぶり出しゲーム」を少しだけいじったものです。シンプルですが、思わぬ本音が出てきて、結構おもしろいです。

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ルールは極めてシンプルで、2人一組になって質問者と回答者に分かれます。

質問者から回答者に「あなたは、どういう人になりたいですか」と質問します。回答者が答えたら、「他には?」と尋ね返し、これを繰り返します。

答えられなくなったら、次の質問「あなたのやりたいことは何ですか?」に移ります。回答者が答えたら、同じように「他には?」と尋ね返し、繰り返していきます。

答えにつまったら、最後の質問「あなたの欲しいものは何ですか?」と尋ね、これを繰り返します。

いよいよそれにも答えられなくなったら、最初の質問「あなたは、どういう人になりたいですか?」に戻ります。

これを3分間繰り返します。

この方法が効果的なのは、相手がいることによって自分を追い詰めることができるからです。一人で紙に向かっているだけではなかなか思い浮かばなくても、時間制限の中で相手に答えようとすることで、脳は答えを捻り出そうとするので、無意識にある自分の願望を浮き彫りにしやすくなります。

自分でも思ってもいなかった答えが出てきたりする場合もあり、自己理解にはかなり有効です。

自分の墓石の碑文を書く

真剣にやってみるとかなり考えさせられるのが、「自分が死んだ時に、どういう人だったと語られたいか」を描くことです。シンプルな方法ですが、かなり効果はあります。私が今の道に進んだのも、これを考えたからでした。

「後悔しない生き方をしろ」とよく耳にしますが、どういう人生を送ったら後悔しないのかは深く考えてみないとなかなかわからないものです。死をイメージすると、限りある時間の大切さを思い知らされるし、我慢する人生がアホらしくなります。

また、逆説的ですが、未来の最終地点をイメージすることで、未来よりも「現在」が大切であることを教えられる気がします。

過去を見ることで、現在の自分がどうやってできあがったのかを知ります。
未来を見ることで、現在の自分が何をするべきかが見えます。

この両方のアプローチから「今ここの自分」を見つめなおすことができ、これらを言語によって明確化することでセルフイメージ(自己概念)ができあがります。

次回、残る2つのステップについてご説明いたします。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。