自分のリーダーは自分自身

来月にある物流企業で若手層にキャリアデザインと自律性をテーマにした研修を担当するお話をいただき、いま教材の準備を進めています。

キャリアデザインとは、自分のキャリア形成について、自分自身でリーダーシップを発揮することです。そして、自律性とは、自分でやると決めたことを実行するよう、自分自身をリードすることです。

一見、異なるテーマの組み合わせのように見えますが、根底にあるものは共通しています。自分自身に対するリーダーシップ、すなわち「セルフ・リーダーシップ」です。

リーダーシップとは

日本では、「リーダー」=「マネジャー」=「責任者」=「肩書きのある人」という認識が根強く、リーダーシップは役職者に問われるもの(役職者になってから問われるもの)と捉えられている傾向があります。

しかし、リーダーシップは役職者の専売特許ではありません。誰にでも発揮でき、誰にでも求められるべきものだと言えます。

ハーバード・ビジネス・スクールのジョン・コッターによれば、リーダーシップの役割は「変化に対応すること」であり、マネジメントは「複雑な状況にうまく対処すること」です。

リーダーとマネジャーは、本来はまったく異なる性質を持ちます。すべてのマネジャーがリーダーにも適しているわけではなく、その逆も然りです。

リーダーシップの具体的な行動として、元マッキンゼーの伊賀泰代さんは、

  1. 目標を掲げる
  2. 先頭を走る
  3. 決める
  4. 伝える

の4点を挙げています。

変化に対応することや、目標を掲げ、先頭を走り、決めて伝えるために、必ずしも立場や肩書きは必要ありません。誰しもが、それぞれの置かれている状況の中で、やろうと思えばすぐにできることです。

つまり、リーダーシップは役職者の専売特許ではないのです。

例えば、会議中に上席者が緊急の電話対応で離席することになったとします。

上席者が会議に戻るまで、議論が中断し、残された参加者がムダなおしゃべりをしたり、それぞれ別のことをしはじめたりすれば、その場にはリーダーシップが存在しないことになります。

しかし、参加者の誰かが「時間がもったいないので、議論を継続するべきだ」と声を上げ、自ら進行役を買って出て、率先して会議を続けていったなら、その人はリーダーシップを発揮したことになります。

変化する状況を見極め、「自分で何とかしよう」と試みること。これがリーダーシップです。

どのように働き、どのように生きるのかを考えるキャリアデザインもまた、自分の進むべき道を自分で決めて動こうとする意味で、リーダーシップの発揮にあたるのです。

全員がリーダーの時代

リーダーシップは、誰もが発揮できるものです。持って生まれたものではなく、訓練によって習得が可能です。つまり、リーダーシップは才能ではなくスキルだと言えます。

しかしながら、しばしばリーダーシップは天賦の才であるかのように語られます。

子どもの頃を思い返しても、クラスや部活動を牽引する「リーダー」には、誰もが認めるような「なるべくしてなる人」が就任していたように思えることもあります。

しかし、そうした人物も生まれたその時から、強力なリーダーシップを持ち合わせていたわけではないはずです。両親の教育や交友関係といった環境の中で、徐々に育まれていったものなのです。

いま、日本では「働き方改革」が叫ばれています。先進諸国の中で最低ランクにある生産性を向上させようと、仕事の進め方や仕事の環境を変えようという動きが活発になっています。

しかし、私は低い生産性の原因が、必ずしも業務プロセスや制度、IT設備などの装備にあるとは思いません。問題の本質はリーダーシップの不在にあるのではないかと考えます。

  • 上司の確認をとったり、判断を仰いだりしなければ、仕事を先に進められない
  • たとえ誤りに気づいていたとしても、自分の担当範囲外のことには手を出さない
  • もっと良い方法が思いついても、決められた手順を守って仕事を行う

こうした伝統的で中央集権的な仕事の進め方が、組織で働く人々のリーダーシップ開発を妨げています。これが生産性の低下を招いている根本的な原因です。

「余計なことはするな」「面倒をおこすな」「人と摩擦を起こすな」という事なかれ主義の文化が、「仕事のできない人」をどんどんと量産させていきます。

現代社会は変化の激しい時代と言われています。そして、変化に対処するのはリーダーシップの役割なのです。

リーダーシップの発揮を求められているのは役職者だけではありません。全員がリーダーシップを発揮しなければならない。そういう時代にあるのだと思います。

リーダーシップを磨く

では、リーダーシップはどのように開発していけば良いのでしょうか。

以前、Yahoo!アカデミアの伊藤洋一さんの講演を聞いた際、リーダーシップを発揮する段階を次のようにおっしゃっていました。

  1. Lead the self 自分自身をリードする
  2. Lead the people 人々をリードする
  3. Lead the society 社会をリードする

誰もが知るような大企業のカリスマ経営者でさえ、はじめから強烈なリーダーシップを発揮できていたわけではありません。まずは、自分の目が届く範囲内で、小さいチームを率いていた時期があるはずです。

そして、たとえ数人であったとしても、他の人を率いるためにはリーダーシップが必要です。自分以外の人が「この人についていこう」と思ってくれるようになるためには、リーダーは「それなりの人」になる必要があるのです。

リーダーシップはまず自分自身への発揮からスタートします。

変化を恐れずに受け入れる。変化に対応するべく、目標を掲げ、率先して行動し、決断し、周囲に伝えて理解を得る。

自分自身を導いていける人は、人々を導いていけるようになり、やがて社会をリードしていく存在になるのです。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。