自分でやると決めたことを、決めたとおりに行う「実行力」の鍛え方

2/25の投稿で、自律的なキャリアデザインを行うために、次の4点が前提として求められるというお話をいたしました。

  1. 自分の頭で考える
  2. 自分にとっての仕事の意味と意義を考える
  3. 偶然を生み出し、チャンスに変える
  4. 決めたことを実行する

今回は最後のポイントとなる「決めたことを実行する」について解説いたします。

▼これまでの流れはこちらから▼

希望退職募集と定年70歳から、自律的なキャリアデザインの重要性を考える(2/25)

「自分の頭で考える」力を鍛える(3/2)

お金のために働くのか、自分のために働くのか(3/9)

キャリアを形成するための「山登り」と「波乗り」~計画された偶然をつくる~(3/16)

成果は行動の結果

これまで4回にわたって、自律的なキャリアデザインに求められるポイントについてお話してきました。

自分の頭で考え、自分にとっての働く意味を見出し、計画された偶然をつくるために周囲の様々なことに前向きに挑戦する。

ここまで意識が整ったら、最後に問われるのは「実行力」です。

意識や能力が直接的に成果を生み出すことはありません。成果を生み出すものは行動だけです。また、能力は行動の蓄積(経験)によって培われるので、逆説的ですが、行動をしないと能力も磨かれていきません。

どれだけ優れた人であったとしても、何も行動せずに念じているだけで成果が生まれることはありません。逆に、意識や能力が未熟であっても、何かしらの行動をすれば、良かれ悪しかれ何かしらの成果が出ます。

とは言え、「下手な鉄砲も数打てば」と闇雲に行動するのも非効率です。どんな行動であっても、時間という限られた資源を配分した中で行いますので、できる限り成功確率を高めるための事前準備、すなわち戦略や計画は必要です。

しかし、どんなに優れた計画を作っても、それを実行しなければ何の成果も生まれません。計画を実行に移す、言い換えれば「やると決めたこと、決めたとおりにやる」ことが、自律的な自分になるための最後の関門と言えるでしょう。

なぜ、決めたことが実行できないのか

人は、なぜ計画倒れになってしまうのでしょうか。

仕事においても、私生活においても、人はみな目標を持ち、前進に向かおうとします。しかし、思うように時間がとれなかったり、やる気が出なかったりして、次第にやらなくなってしまうことも、たびたびあることでしょう。

もしかしたら、それは自分の意思が弱いからだと思っていないでしょうか。

決めたことが実行に移せない理由を「意思の強さ」にしてしまうと、おそらく計画を遂行できるようになるには相当な苦労や苦痛を伴うことになると思います。

なぜなら、人はそもそも、新しいことに積極的に取り組むようにできていないからです。むしろ、新しいことや挑戦的なことを避け、慣れ親しんだ現状にとどまろうとするのが、人の心理の通常の状態なのです。

こうした心の働きを「現状維持バイアス」と呼びます。

人はみな、利益から得る満足度よりも、同額の損失から得る苦痛の方が大きいと判断する「損失回避性」を持っていて、大きな変化や未知なるものを避け、現状を維持したくなる心理作用が働いています。つまり、人はそもそも「変化すること」自体を避ける傾向にあるのです。

この現状維持バイアスの正体は、コンフォート・ゾーン(心理的安心領域)という心理空間です。これまで経験してきたことや自分がすでに知っていること、すなわち自分の過去が作り出す自分の心理的な安全圏と言えます。

コンフォート・ゾーンの内側を安心・安全だと認識し、できる限りそこにとどまりたいという欲求が私たちの無意識で働いています。そして、コンフォート・ゾーンの外側、つまり未知の環境や行動は危険と認識し、それを無意識が避けようとしています。

高い目標を掲げ、それまでやっていなかった新しいこと、難易度の高いことに挑もうとするのは、コンフォート・ゾーンの外側に出ようとしていることに相当します。

しかし、危険を避け、安全を求めようとする現状維持バイアスが、コンフォート・ゾーンの内側に私たちを引き戻そうとします。それが、気分のムラや、できない言い訳(「時間がない」というのはその代表例と言えます)となって現れます。

人間の行動の9割以上は無意識で行われます。無意識が作り出すコンフォート・ゾーンの力は非常に強力で、「意思の力」だけで乗り越えようとするのは非常に困難です。よほど強い欲求があって、それが持続できるものでない限り、コンフォート・ゾーンに引き戻される力に負けてしまいます。

無意識による抵抗に打ち勝つためには、無意識で立ち向かっていく必要があります。たとえ意思が弱まっても、気分がのらなくても、多少体調が悪くても、決めたことを実行できる力を身につけられれば、どんな状況下でも目標に向かって計画を進めていくことができます。

そこで味方につけたいのが「習慣の力」です。

「決めたことをやる」習慣を身につける

一定の行動を長期間にわたって繰り返し続けた結果、それをすることが「当たり前」の状態になることを習慣と言います。

することが自分にとって「当たり前」なので、状況が悪かろうが、体調が悪かろうが、気分が乗らなかろうが、無意識が自然とそれをするように自分の身体を導いていきます。

食事の後に歯を磨く、お手洗いの後に手を洗う、食事の前には「いただきます」、食べ終わったら「ごちそうさま」・・・など、私たちは子どもの頃に数々の習慣を培い、それをずっと継続していきます。

一度習慣になったことは自然と行います。歯を磨くのに気合いを入れる必要はありませんし、気分が乗らないから「いただきます」を言わないといったこともありません。それをするのが「当たり前」だからです。

自分で決めたことを確実に実行できるようにするためには、それ自体を習慣にしてしまうことが有効です。意思の力が強くなくても、気分や体調が優れなくても、自分でやると決めたことをするのが「当たり前」という状態になってしまえば、後は無意識が自然と行動に導いてくれます。

たとえ目標が高くても、計画が困難でも、それに挑む自分自身の「当たり前」の水準が高ければ、無意識が前進を後押ししてくれます。まずは、決めたことを実行するのを習慣として定着させることを目指しましょう。そのためには、自分自身に対する躾が必要です。

生まれながらに食後に歯を磨く人はいませんし、お手洗いの後に手を洗う人もいません。はじめから「いただきます」が言える人もいません。

両親などの家族、あるいは学校の先生などから、しつこく何度も何度も指摘され、しぶしぶやり続けた結果、その行動の蓄積が習慣を培います。言わば外圧の強制力によって、自分の行動習慣を矯正することです。これを躾と言います。

自分がやると決めたことを、実行に移す。自分自身に対して、それを躾していくのです。

自分自身に対して「躾」を行う

効果的に躾を行うためには、2つのポイントがあります。それは「ルール(規則)」と「ツール(道具)」です。

習慣として定着させるためには、同じ行動を何度も繰り返し行う必要があります。時と場合によって、やったりやらなかったりという状況が続いてしまっては、無意識はそれを「当たり前」の状態とは認識できません。自分自身の行動を矯正していくためには、一定のルールを設けることが有効です。

「決まった時に」「決まったことを」「決まった量だけ」行うようにルールを定めておくことで、その行動の繰り返しが無意識に「当たり前」を認識させます。最も手っ取り早いのは「毎日やることを決める」ことです。毎日やることを決め、それを毎日やり続けることで、「決めたことをやる」こと自体が習慣として定着していきます。

その上で、実施した行動を記録するツール(道具)を用意しておくことが、習慣形成を後押ししてくれます。手帳、ノート、チェックリスト、スマートフォンのアプリなど、何かしらの記録ツールを用意し、決めたことが実行できたら「○」や「✓」、できなかったら「×」や「ー」などをつけていくようにします。

毎日の行動結果を記録し、「○」や「✓」がつけられる状態が続いていくと、次第にそれが自分にとって当たり前の状態になっていきます。目で見える効果は大きく、この記録をとっているか/いないかによって、「毎日やっている実感」の強さがだいぶ異なります。

毎日やることを決める。やると決めたことを毎日やる。

その結果が記録として目に見える状態になっている。これが、自分自身に対する自信と規律を強化し、決めたことをやるのが「当たり前」の状態を作り出していきます。

私自身は、自分に対してのルールとして下記を定めています。

■毎日やること

  • 個人的なミッション、ビジョン、今年の目標の確認
  • 月の計画、週の計画の確認、当日のタスクを整理してチェックリストを作成
  • 1日の行動記録(何時に、何をしたか)
  • 簡易な日記(今日の感謝、今日の学び)
  • 10回以上、他人に対して「ありがとう」と言う

■平日のみ毎日やること

  • 自己啓発音声教材の速聴(ナポレオンヒル・プログラムなど)
  • 学校教育の学び直し(英語・数学・理科、リクルート社・スタディサプリ)
  • 読書(1日15分~30分程度)

これらをすべて、手帳に1日1ページで記入しています。何度か書式の見直しはありましたが、2010年2月5日から、かれこれ10年以上毎日続けています。

実際のところ、その日の予定や状況によって、すべての目標がクリアできない日もあります。家族の体調など、自分の規律よりももっと優先しなければならないケースもあるからです。

しかし、それでも10年以上続けていると、これらをやることが自分にとって1日の「最低限の水準」になっています。✓マークがつかないと気がかりでそわそわしますし、すべての項目が記入できてようやく安心して寝れる状態になります。

こうして改めてリストアップしてみると、それなりの時間がかかる感じがするのですが、習慣になると無意識がやってくれるようになるので、時間をかけている時間はあまりありませんし、少なくとも負担感を感じることはありません。

家族構成が変わったり、暮らしの環境が変わったりしたことで、項目の見直しが生じることもありますが、少なくとも「毎日やると決めたことをやる」のはだいぶ定着してきたように思います。

毎日やることを決め、それをやるのが当たり前の状態になると、次第に週単位の目標、月単位の目標をクリアしようとすることも自然な状態になってきます。

それでも、計画の見込みが甘かったり、体調が優れなかったりして、積み残しが生じることもあります。自分自身も周囲の環境も、絶えず変化しているからです。

ただし、欲張りすぎた目標はクリアできないことがあったとしても、長期的な視点からその月に必ず成し遂げなければならないことは、何としてでも終えようとしていると思います。これが躾だと私は考えています。

自分の人生をより望ましいものにしようと願うなら、自分がなりたいと思う自分に近づこうとするなら、そこにつながる行動を自分で考え、それを自分に課し、かつ実行に移せるように自分自身を律し続ける力が必要です。それが「実行力」です。

高みを目指せば目指すほど、そこに至る道のりも険しくなります。それでも、自分自身への躾を怠らないように自分を律し続けている限り、「やったり、やらなかったり」を繰り返すよりも、はるかに良い人生が送れるだろうと私は信じています。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。