リアル勤務とリモート勤務のマネジメントに違いはあるのか

11都府県への緊急事態宣言が発令されて2週間が経ちました。残り期間はあと2週間ほどですが、感染状況は収束しているとは言い難く、現在の緊張感は3月以降まで持ち込むのではないかと個人的には思います(諸々の政治的な事情があるので、宣言自体は2月8日で終わりになるでしょうが)。

昨年4−5月の宣言時よりも効果は薄いと言われがちですが、それでも私がお付き合いさせていただいている企業様では再びリモートワークでの勤務体制に移っているところが少なくありません。研修案件はほぼオンラインとなり、ご自宅から参加の方も非常に多いです。

さて、昨年の緊急事態宣言の時にもしばしば、

  • リモートワークのマネジメントは難しい
  • メンバーが目の前にいないと管理・指導できない

という声が聞かれました。

私自身もそうですが、世で働くほとんどの方は、社会人として就業をはじめて以来「職場に通勤し、出社して勤務するのが”当たり前”」という環境の中で育ってきました。したがって、職場の人間が周囲にいないというのはイレギュラーな事態であり、組織を管理するマネジャーの立場からすれば「メンバーが目の前にいなければ管理のしようがない」と言いたくなる気持ちはわかります。

しかしそれは、リモートワークががいまだ心理的安心領域(コンフォートゾーン)の外側なので、現状維持バイアスが働いて元の状態(リアル勤務)に戻りたいと無意識が言っているだけだと言えます。

結論から言ってしまうと、リモート勤務でもリアル勤務でも、マネジメントでやるべきことは何も変わりません。マネジメントの本質から考えれば、メンバーが目の前にいる/いないは大した問題ではなく、コミュニケーションツール(手段)を変えれば良いだけの話だと言えます。

「リモートだからマネジメントができなくなった/難しくなった」ということは決してありません。もしそう感じるのであれば、厳しいようですが、それはリアル職場でもマネジメントが機能していなかったことの表れではないかと思います。

そもそも「管理」とは

マネジメント(管理)とは、

  1. やることを決める(目標設定・計画策定)
  2. 決めたことをやる(実行)
  3. やったことを記録する(進捗管理)
  4. 記録を振り返り、計画の修正やプロセスの改善を図る(評価と改善)

ことです。すなわち、PDCAサイクルを回すことだと言えます。

この4つはプロセスを表しているため、すべての起点になるのは「1.やることを決める」です。いざ実行に移す前に、

  • 課題を明確にし、
  • 「何を」「どれだけ」「いつまでに」行うのか目標を立て、
  • それをどういうタスク構成で行い、どの日程・時間帯に行うのかの計画を立てる

ことが必要であり、これが緻密で具体的であればあるほど、進捗管理と評価がしやすくなります。

計画がしっかりできてさえいれば、管理というのは「計画通りに進んでいるか/いないか」を把握し、評価するだけです。もし計画通りに進んでいるのであれば、それを期日までに淡々とやり続けるだけであり、何の手を加える必要もありません。つまりマネジャーの介入はなくても構わないのです。あえて言えば、行動を承認し、自己効力感と他者受容感を高めて、モチベーションを持続させるよう努めるまでです。

もし計画よりも遅れているのであれば、軌道修正のための対策が必要となるので、時にはミーティングを行うことも求められるでしょう。しかしこれも、進捗が遅れた場合を想定してあらかじめ「プランB」を想定しておけば、然るべきタイミングでそれを発動させれば良いというだけの話になります。

つまり、事前にしっかりと段取りや計画、準備ができてさえいれば、管理上行わなければならないことは進捗管理くらいしかないと言えます。そして、進捗を把握するためには現状報告が必要となりますが、あらかじめ計画と評価指標、基準が定められていれば、報告するべき内容はとてもシンプルになります。Teamsやslack、メールなどを通じて、テキストベースで報告を受けるだけで十分だと言えるでしょう。

マネジメントの成否を決めるのは、目標達成に向けた具体的な計画をどれだけ「事前に」準備できるかどうかです。PDCAと言うくらいですから、P(計画)が起点なのです。「やってみなければわからない」「想定していなかったことが起きた」というのは、リスクマネジメントにおける仮説の精度が低いことの表れです。考える力が弱いか、考えるための時間を十分にとっていないかのいずれかに起因する問題だと言えます。

そう言っても、想定外の事態は起きるかもしれません。しかし、仮に想定外のことが起きたとしても、今後はその経験を活かしてより精度の高い計画を作れば良いという話です。だからこそPDCAは「サイクル」として機能するわけで、元々のプランがしっかり練られていれば、それをベースにしてどんどん修正・改善が行われていくことになります。つまり、仕事をするごとにレベルアップしていくはずなのです。

マネジメントで重要なのは「事前」の準備

「メンバーが目の前にいないと管理ができない」というのは、事前の計画が十分にできていないことの表れです。PDCAで言うならば、D(実行)だけやっている状態だと言えます。基準となるP(計画)がないので、C(評価)もA(改善)もできません。

マネジャーにもメンバーにも仕事の進め方に関するシナリオがないので、認識が噛み合わず、現状把握やゴール設定のためのミーティングが長引いてしまいがちになります。

評価指標が定まっていないので、報告も長くなりがちで、時に成果に直接関係のないことに労力を割いてしまうことがあります。そもそもどこを見ればいいのかが定まっていないということは、マネジャーがメンバーの行動を観察するにあたって、仮説検証に多大な時間を要してしまうことにつながります。

作業プロセスに関する仮説がないので、問題が生じた時に何が原因なのかが特定できず、空振りの対策を手当たり次第打ち続けることになります。

そして、計画がないためすべての対応が「その場対応」になり、目標達成に向けて問題がない進捗なのかどうかの判断がつきません。よって、問題が手に負えないレベルに肥大化してから、慌ててその対応に追われることになります。当然、問題解決は困難になります。

これらは、すべて「事後」の対応であり、計画を基準とする本来的なマネジメントの対極の姿だと言えるでしょう。

その場の対応に終始するだけで、作業プロセスも作業者の能力も一向に改善・成長していかないので、いつまでたっても業務の効果性・効率性が上がりません。しかし、外部環境は日々刻々と変化しており、求められる課題解決力も日増しに高くなっています。

ロールプレイングゲームに例えるなら、プレイヤーのレベルが上がらないまま、登場する敵だけがどんどん強くなっている状態です。こんな戦い方を続けていたら、疲弊するのが当然の結果だと言えます。レベルを上げ、装備を整えないと、次のフィールドにとても進めません。

マネジメントの肝は「事前」です。事前の計画、シナリオ、評価指標が定まっていれば、日々の進捗管理はテキストチャットで十分にできるはずです。ましてや、作業の様子を逐一観察している必要はありません。マネジメントとは「管理」することであり、「監視」することではないのです。

評価するための基準があるので、

  • 計画通りにいったのか/いかなかったのか
  • その原因は何なのか

さえわかれば、スピーディーに現状を把握し、問題解決にあたることができます。

もしミーティングを行わなければならないのだとすれば、それは対処する問題があまりに複雑な構造になっていて、メンバーの能力の範疇を超えた場合のみです。その際はしっかりと時間を取り、問題解決に向けたシナリオと計画をしっかりと練り上げることです。それが、以降の進捗管理の基準となるわけです。

ミーティングはどれくらいの頻度で開くべきか

リモート環境におけるミーティングの頻度についても触れておきます。上記のように申し上げたものの、一定頻度のミーティングは必要です。計画がしっかりできていて、進捗管理がテキストベースで十分できるとしても、人間関係の構築、所属意識のメンテナンス、チーム一体感の醸成、そして潜在的な問題発見のためには、定期的に顔を合わせて口を交わす機会を設けておくことが求められます。

当然ながら、業務内容やメンバー構成によって適切な開催頻度は異なりますが、チーム全体のミーティングは、1ヶ月に2〜3時間程度を目安にすることが望ましいです。例えば、下記のような構成が可能です。

  • 月に1回、2〜3時間程度
  • 週に1回、各30分〜45分程度
  • 週に2回、各15分〜20分程度

もしこれを超えるようであれば、そこには本来テキストベースで済むはずの一方的な報告が含まれると考えられます。チーム全体ミーティングでは、参加している全員に発言の機会が得られるような進行を心がける必要あります。特定の人しか口を開かないようであれば、それは別の手段で代替可能な情報共有をししているに過ぎません。一同会したからには、全員での意見交換が行われるべきです。

また、ある程度長い時間を要するような込み入った話が必要であれば、それは定例ミーティングとは別枠として、個別課題の解決に向けたミーティングを、関係者のみで改めて開催するべきだと言えるでしょう。

それから、個人ごとのミーティング(いわゆる1 on 1)の開催頻度は、下記の基準が目安になります。

  • 新入社員・新規配属者:1日1回、あるいは2回(朝・夕)
  • 一般的なメンバー:週1回(週初または週末)、あるいは2回(中間を加える)
  • 成熟したメンバー:月1回

あくまで、顔を合わせたミーティングを指すものであり、テキストベースの定例報告は基本的に日次(または週次)で行う必要があります。また、当然ながら、イレギュラーな相談事項が発生した場合には、計画外のミーティングを単発で行えるようにしておくことも大切です。

個別ミーティングの目的はティーチング(指導)、コーチング(目標設定と工程設計)、チューニング(認識矯正)を行うことであり、成果物として必ず具体的な行動計画を作り出すことが求められます。中でも、月間計画と週間計画は極めて重要で、これがPDCAサイクルを回すためのベースになります。

加えて、いずれの場合においても重要なのは、雑談の時間を十分に設けるということです。オンラインミーティングでは、しばしば「本題だけ話して終わり」という現象が起こりがちです。しかし、リアルに対面した時のミーティングでは、本題だけ話をして終わりになることは考えにくく、なんだかんだ顔を合わせれば雑談を行うものです。

そして、この雑談の中に、ビジネスのアイデアや問題の本質的な原因が潜んでいることが決して少なくありません。オンラインミーティングでも意図的に雑談の時間を設けることが有効で、場合によっては所要時間の半分以上を雑談に割いても構わないでしょう。行動計画がしっかりとできていれば、おおよその報告はテキストベースでフォローが可能です。

ニューノーマル(新常態)に備える

先日、ある記事で新型コロナウィルスの収束が2023年になる見通しだと読みました。感染症が鎮静化するためには集団免疫を獲得する必要があり、そのためにもすべての人が罹患もしくはワクチンを摂取することが求められるとのこと。その実現にはあと2−3年はかかるということです。

この数年間のうちに、リモートワークで働くということが新しい常態(ニューノーマル)として定着することが予想できます。来るべき新時代に備えて、今のうちにリモート勤務に慣れ、問題なく業務運営ができるようになっておくことが求められているだろうと考えます。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。